快適さは室温だけでなく放射・湿度・気流で決まります。24時間冷房と夏型結露、風向、空気循環を整理します。
冷房の効き方を考えるとき、私たちは室温の数字を見ます。室温は測りやすく、冷房運転の大切な目安です。
ただし、人が「暑い」「涼しい」と感じる仕組みも、建物の中で水分が動く仕組みも、室温ひとつでは説明できません。
大切なのは、測りやすい指標と、本当に起きている現象を分けて考えることです。
室温は重要な指標。でも、快適さの全部ではない
人の体は、つくった熱を周囲へ逃がしながら体温を保っています。主な熱の逃げ道は、壁・床・天井・窓などとの放射、周囲の空気との対流、汗の蒸発、呼吸などです。
このため、温熱環境は空気温度だけでなく、周囲の表面温度をまとめた「平均放射温度」、湿度、気流、着衣量、活動量を合わせて評価します。
空気の温度は、二酸化炭素濃度を換気の目安にするのと少し似ています。測りやすく、状態を把握するうえで役に立つ指標です。ただし、二酸化炭素だけが空気の汚れではないように、室温だけが快適さを決めるわけではありません。
もっとも、室温は単なる代用品ではありません。空気は体表面との対流熱交換に直接関わり、湿度とともに汗の蒸発にも影響します。つまり、室温は本当に作用する要因でありながら、単独では足りない指標なのです。
同じ26℃でも、壁や天井が熱ければ暑く感じる
風が強くない室内では、人が感じる温度の目安である「作用温度」を、おおむね次のように考えられます。
作用温度 ≒(室温+平均放射温度)÷2
たとえば室温が26℃でも、壁・床・天井・窓から受ける平均放射温度が30℃なら、作用温度はおよそ28℃です。室温26℃のまま建物の表面が26℃まで落ち着けば、作用温度もおよそ26℃になります。
熱量の概算でも見てみましょう。衣服表面を31℃、室温を26℃、平均放射温度も26℃と仮定し、対流の熱伝達率を約3W/㎡K、放射を約5W/㎡Kと置くと、体表面1㎡あたりの顕熱放散は、対流が約15W、放射が約25Wです。
ところが室温26℃のまま、平均放射温度だけが30℃になると、放射による熱放散は約5W/㎡まで小さくなります。この単純計算では、対流と放射を合わせた熱の逃げ方が約40W/㎡から約20W/㎡へ半減します。
実際の人体では衣服、姿勢、風速、発汗などで値は変わりますが、室温が同じでも周囲の表面温度によって熱収支が大きく変わることは分かります。
ですから、冷房の目的を「空気を何℃にするか」と考えるのではなく、壁、床、天井、窓、家具を含む室内全体を、人が熱を逃がしやすい状態へ整えることと考える方が実態に近くなります。
空気は、熱を運ぶ働き手でもある
エアコンは、室内機の近くの空気を吸い込み、冷やして吹き出します。冷えた空気が室内を動くことで、壁や天井、家具、人との間で熱を受け渡します。
冷房時に吹き出しを真下へ固定すると、冷たい空気が床付近へたまり、天井付近に暖かい空気が残りやすくなります。冷房時は水平に近い向き、またはスイングを使い、冷気を高い位置から広げるのが基本です。
人の体に冷風を当て続けると不快になりやすいため、直風は避けます。しかし、空気の動きまで止める必要はありません。サーキュレーターや扇風機を併用し、上下や部屋の奥に空気の通り道をつくると、温度むらを減らしやすくなります。
体への直風は避ける。でも、空気は動かすべきです。
24時間冷房で考えたい、もう一つの熱と水分
ここからは、人の快適さではなく、建物の保護の話です。
夏は、屋外の暖かく湿った空気に対し、冷房した室内側が低温になります。外から壁の中へ入った水蒸気や、材料がもともと含んでいた水分が、冷えた部分で露点温度を下回ると、壁体内結露、いわゆる夏型結露が起こり得ます。
発生のしやすさは、地域の気候、雨や日射、方位、室内の設定温湿度、断熱・防湿・通気層の構成、隙間からの空気移動、材料の初期含水率などで大きく変わります。
従来の間欠冷房では、冷房を止める時間に壁体の温度差が小さくなり、水分は比較的すぐに乾きました。冷房を一日中続ければ、室内外の温度差と水蒸気圧差も長く続きます。その建物の壁体構成によっては、毎日の乾燥余地が減り、水分が少しずつ蓄積する可能性を考える必要があります。
ただし、24時間冷房なら必ず結露するわけではありません。連続冷房を前提に、通気・防湿・気密・除湿が適切に設計された建物もあります。
とはいえ、現実の建物を隅々まで完璧な状態にすることはできません。そのような建物であっても、人や設備に差し支えのない時間帯に、意識して冷房を止める時間を設けることは、建物に乾燥する余地をつくるうえで有用です。
一方、24時間稼働を前提とする全館空調・換気・除湿などのシステムは、長時間止めることが適切でない場合もあります。停止後は再起動を忘れないようにしてください。旅行中に数日止める場合を含め、停止の可否や時間は、それぞれのシステムやメーカーの注意事項に従いましょう。
反対に、短時間の冷房でも、雨水の侵入や大きな気密欠損があれば問題は起こり得ます。
「4時間程度止める」は、建物に乾く余地を与える運用目安
建物の構造や温湿度の状態が分からないまま、24時間冷房を一律に安全と決めつけないことは大切です。
留守中や比較的涼しい時間帯など、人の安全を損なわず、屋外の湿度条件も悪くないときに、4時間程度をひとつの目安として冷房負荷を緩める時間を設ける。これは、室内側の表面温度を回復させ、建物に乾燥方向へ動く余地を与えるという考え方です。
ただし、4時間は、すべての建物で結露が乾くことを保証する数字ではありません。外気が非常に蒸し暑いときは、窓開けで湿気を入れたり、冷房停止によって室内湿度が上がったりすることもあります。
- 暑さ指数が高い日や、室温・湿度が危険になる時間は無理に止めない
- 高齢者、子ども、体調不良者、ペットがいる部屋は人の安全を優先する
- 冷房停止中も温湿度計で室内を確認する
- 窓開けが乾燥になるとは限らない。外気が高湿度なら除湿運転なども検討する
- 結露臭、カビ、壁紙の変色、木部の異常などがあれば専門家に相談する
4時間という時間を守ることが本質ではありません。温度差を休みなくつくり続けず、建物が乾く方向へ戻れる時間があるかを意識することが本質です。
運転の工夫より先に、建物側で備える
住まい手の運転は、建物を守る補助的な対策です。本来は、連続冷房を含む実際の暮らし方を想定し、壁体の通気層、防湿層、気密、雨仕舞、材料構成を計画することが先です。
特に、冷房を長時間使う住宅、夏に高温多湿となる地域、室内を低温に設定する用途では、時間ごとの熱と水分の移動を扱う非定常の温湿度解析が役立ちます。
家を建てるとき、改修するときは、次のように尋ねてみてください。
この壁と屋根は、夏に長時間冷房しても、入った水分が外へ抜ける構成になっていますか。
思い出したい4つの言葉
冷房の効率や快適さを考えるとき、思い出したい4つのこと。
- 冷房の目的は、室温を下げることじゃない。壁、床、天井、家具の温度まで整えること
- 24時間冷房は、建物を傷めることがある。1日4時間を目安に休ませ、うっすら結露が乾ける時間をつくる
- 冷房で真下送風は、冬の使い方。水平かスイングにする
- 直風は避けたい。でも空気は動かすべき。サーキュレーターも使い、空気にもっと仕事をしてもらう
室温計の数字だけでなく、人と建物の間で、熱と水分がどう動いているかを見る。そこから、冷房の効率、快適さ、建物の寿命を一緒に考えられるようになります。
