省エネ住宅という言葉はよく聞きますが、その中身はあいまいです。補助金や認定基準の話なのか、光熱費の話なのか、それとも快適性の話なのか。断熱・省エネ設備・創エネという三つの要素を整理していきます。
省エネという言葉が、分かりにくくなっている理由
「省エネ住宅」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。
高断熱、太陽光発電、光熱費が安い家。どれも間違いではありませんが、実はそれぞれ指しているものが違います。
省エネの話が分かりにくくなるのは、
制度の話・暮らしの話・社会の話が混ざったまま語られるからです。
まずは、その整理から始める必要があります。
省エネを考える三つの視点
住宅の省エネを考えるとき、少なくとも次の三つの視点があります。
- 基準:補助金、長期優良住宅、建築確認などの認定基準
- 快適性:暑さ寒さを我慢せずに暮らせること
- エコ:エネルギーや資源の使用を抑え、社会全体の負荷を減らすこと
どれか一つを優先する話ではなく、本来はすべてを両立させる必要があります。
基準とエコは、もともと親和性が高い
建築基準や各種認定制度は、社会全体のエネルギー負荷を下げるためにつくられています。
補助金制度も、その方向性を後押しする仕組みです。
現在の新築住宅では、建築確認申請の基準が義務になっているため、極端にエネルギー効率の悪い家は、ほとんど存在しません。
長期優良住宅の水準も含め、ここは「最低限クリアしている前提」として考えるのが現実的です。
このページで扱っているのは、その最低ラインを超えた先をどう考えるか、という話です。
快適性とエコは、対立していない
「エコのためには我慢が必要」
快適性を感じるためにエネルギーを使用する生活で、エネルギーを削減するということは快適性を我慢するということです。
省エネとは、我慢せずに快適で、しかし結果としてエネルギー消費が少なくエコになるという状態です。
エコであることを意識させず、暮らしとして自然に成り立っている。
その状態こそが、住宅の省エネとして健全だと考えています。
我慢しない快適性と、省エネ器具の役割
ここで一つ、はっきりさせておきたいことがあります。
省エネ器具は、快適性を高めるためのものではありません。
省エネ器具の役割は、快適性の低下をできるだけ抑えながら、エネルギーや資源の使用量を減らすことです。
たまたま「快適に感じる」場合があるかもしれませんが、それは結果であって、目的ではありません。
光熱費が下がることは、もちろん嬉しいことです。
ただし、それは経済的なメリットであって、体感としての快適性とは別の話です。
快適性をつくる主役は、設備ではなく、
建物そのもの(断熱や空間環境)です。
断熱・省エネ設備・創エネの役割の違い
断熱
断熱は、室内環境を安定させるためのものです。
暑さ寒さを我慢しないことが最優先であり、その結果としてエネルギー消費や光熱費に影響します。
省エネ設備
省エネ設備は、同じ快適性を、より少ないエネルギーで維持するための道具です。
使用のハードルを下げることにより、間接的に快適性をアシストします。
創エネ
創エネは、社会的なエネルギー負荷を下げる役割が大きい要素です。
快適性が向上するということはありません。
経済的メリットに着目した場合は、金融商品に劣る利回りしかありませんので、社会貢献を主眼に判断するのが本筋です。
省エネの提案は、優先順位で変わる
省エネの考え方には、いくつかの軸があります。
- 快適性を最優先に考える
- 経済合理性を最優先に考える
- 環境負荷の低減を最優先に考える
どれが正しい、間違っている、という話ではありません。
どこに軸を置くかで、提案の内容は変わります。
光熱費削減の話は、少し冷静に
省エネ効果を強調する説明では、極端に性能の低い住宅と比較しているケースも少なくありません。
現在の新築住宅は、最低基準でも一定の水準を満たしています。
「劇的に下がる」という話は、比較条件を確認した上で、話半分で聞くくらいがちょうど良いと感じています。
省エネは、正解を選ぶ話ではない
省エネ住宅は、何か一つを選べば完成するものではありません。
基準・快適性・エコ。
この三つを、どう両立させるか。
その考え方が、住まいの性格を形づくります。
このページが、「何を選ぶか」ではなく、「どう考えるか」を整理する材料になれば幸いです。
