面積を増やすのではなく、ひとつの空間ができることを増やす
※画像は実際の施工事例ではなく、コンセプトイメージです。
小さな家をつくるなら、私は最初から部屋を並べません。
まず、その家で必要になる機能を書き出します。
料理する。食べる。くつろぐ。仕事をする。遊ぶ。眠る。着替える。洗う。干す。しまう。来客を迎える。一人になる。
家に必要なのは、「リビング」「書斎」「家事室」といった部屋の名前ではありません。
そこで何をするかです。
部屋ではなく、機能を組み合わせます
必要な機能を書き出したら、それぞれについて考えます。
毎日使うのか。ときどきしか使わないのか。
誰が、何時ごろ、何人で使うのか。
音、におい、水、湿気は出るのか。
使った物を、すぐ近くへ片付けられるのか。
同じ時間に、別の人も使いたくならないか。
使う時間が重ならず、必要な家具や環境が似ているものは兼ねます。
反対に、同時に使うことが多いものや、プライバシーが必要なものは、小さくても分けます。
何でも一緒にするわけではありません。
意外な組み合わせを探します
たとえば、玄関と短い応接です。
来客を必ずリビングへ通すのではなく、玄関に腰掛けられる場所をつくる。
荷物を受け取る。近所の人と少し話す。業者さんと短い確認をする。その程度なら、そこで済ませられます。
ベビーカーを置く。子どもに靴を履かせる。買い物袋を一度置く。外で使う物を手入れする。
玄関は、出入りだけでなく、外と家の間で行う小さな用事も兼ねられます。
もちろん、長く過ごす応接には向きません。通行の邪魔にならない広さや、暑さ寒さへの配慮も必要です。
それでも私なら、たまにしか使わない応接室を別につくる前に、玄関で兼ねられないかを考えます。
もうひとつは、普段の居場所と来客の寝床です。
普段は腰掛ける。子どもが遊ぶ。昼寝をする。洗濯物を畳む。必要なときだけ寝具を出して、来客の寝床にする。
寝具の収納、目隠し、夜間のトイレまでの動線を考えておけば、日常の居場所と来客の場所を兼ねられます。
来客が多い家や、長期間泊まる人がいる家には向きません。
それでも、年に数回しか使わない客間なら、私は毎日使う居場所と兼ねます。
私なら、こう組み合わせます
- 食卓は、食事、家計、宿題、洗濯物を畳む場所と兼ねます。ただし、毎日長時間使う仕事場は分けます。
- 赤ちゃんの遊び場は、家族が普段くつろぐ場所と兼ねます。安全と育児用品の収納は先に考えます。
- 洗面と脱衣は、よく一緒にされますが、私は分けます。同時に使うことが多く、必要なプライバシーも違うからです。
- 室内干しと衣類収納は隣接させますが、同じ空間にはしません。湿気を扱う場所と、乾いた衣類をしまう場所は分けます。
近くにあると便利な機能でも、一緒にすると毎日ぶつかることがあります。
「小さな家だから全部を一緒にする」のではありません。
兼ねても困りにくいものは兼ねる。分ける価値があるものは分ける。
私は、その順番で考えます。
うまく兼ねるには、準備が必要です
食卓を仕事や宿題にも使うなら、書類や文房具をすぐ近くへしまえるようにする。コンセントや手元の明かりも用意する。
赤ちゃんの遊び場と家族の居場所を兼ねるなら、家具の転倒、物の落下、窓や段差、コンセント、暖房器具との距離を先に確認する。
普段の居場所を来客の寝床にもするなら、寝具をしまう場所や、必要なときだけ視線を遮る方法まで考えておく。
空いている場所に机や布団を置けるだけでは、機能を兼ねたことにはなりません。
使う人、時間、収納、明かり、音、片付けまで考えて、初めて気持ちよく兼ねられます。
兼ねる家は、少し面倒です
機能を兼ねると、次の使い方に変えるたびに片付けが必要です。
家族同士で、使う時間を譲り合うこともあります。専用室のように、作業を途中のまま残すこともできません。
収納や造作家具まで丁寧につくれば、床面積を小さくしても、単純に安くなるとは限りません。
専用の部屋には、いつでもすぐ使える良さがあります。
仕事や趣味に集中したい人。来客が多い人。生活時間の違う家族が同居する家。
そうした場合は、無理に兼ねず、小さくても分けた方がよい場所があります。
それでも、私なら機能を兼ねます
それでも私なら、たまにしか使わない小部屋をいくつもつくるより、ひとつの広い場所を、使い方を変えながら毎日使います。
意外な組み合わせでも、使う時間と条件が合えば兼ねる。
一般的な組み合わせでも、家族の行動がぶつかるなら分ける。
小さな家を、狭い部屋の集まりにはしたくありません。
私が小さな家をつくるなら、部屋の数を考える前に、家族がすることを全部書き出します。
面積を増やすのではなく、ひとつの空間ができることを増やす。
私は、そうやって小さな家を広くつくります。
